「採用動画を作りたいが、外部の制作会社に依頼すると数十万円かかると聞いて二の足を踏んでいる」——こうした院長・広報担当は少なくありません。結論として、採用動画はiPhoneと数万円の周辺機材があれば内製で撮影可能です。照明とマイクという2点への投資が、動画の見え方・聞こえ方を大きく左右します。
まず押さえるべき要点は3つです。
- 機材はカメラ本体より周辺機器に予算を割く:iPhoneのカメラ性能自体は十分なため、照明とマイクへの投資が完成度を左右します。
- 撮影は台本の丸暗記でなく一問一答形式で進める:話し方が自然になり、編集の手間も減ります。
- 公開先は求人媒体とGBPの両方を想定する:撮影時点でどこに掲載するかを決めておくと、縦横比や尺の作り直しを避けられます。
採用動画とは、クリニック・薬局が自院の職場環境や働く人の様子を映像で伝える求人コンテンツです
採用動画とは、写真とテキストだけでは伝わりにくい院内の雰囲気、スタッフの表情、働き方の実態を映像で補足する求人コンテンツです。求人票やホームページに埋め込む形で使われることが一般的で、単独の広告媒体ではありません。
医療広告ガイドラインの観点では、患者向けの診療内容広告と異なり、採用動画は労働者向けの求人広告に位置づけられます。ただし院内の様子を映す以上、患者が映り込まないよう配慮が必要です。撮影時間帯を診療時間外に設定する、患者が映る可能性のある待合室での撮影を避けるといった運用上の工夫が求められます。
機材の目安:照明1.5万円台・マイク2〜3万円台・三脚で総額5万円前後
内製化を検討する際にまず気になるのが機材費です。一般的な目安を以下にまとめます。
| 機材 | 役割 | 価格帯の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| iPhone(手持ちの機種) | 撮影本体 | 追加費用なし | 4K撮影対応機種であれば十分 |
| LEDリングライトまたはパネルライト | 顔映りの明るさ・影の軽減 | 1万5,000円前後 | 診察室・待合室は照明が暗いことが多く必須級 |
| ピンマイク(ワイヤレス) | 音声のクリアさ | 2万〜3万円台 | 院内は反響しやすくカメラ内蔵マイクでは聞き取りにくい傾向 |
| 三脚・スマホホルダー | 手ブレ防止 | 3,000〜5,000円 | 固定カットの安定に必須 |
| 編集アプリ | カット・テロップ挿入 | 無料〜数千円 | スマホ完結型アプリで十分な場合が多い |
合計すると総額5万円前後に収まるケースが多く、制作会社への外注(数十万円規模になることも)と比べて低コストで着手できます。まずは1本試作し、応募状況を見ながら追加投資を判断する進め方が現実的です。
撮影手順:企画→院内合意→撮影→編集→掲載の5ステップ
行き当たりばったりで撮影すると、使えるカットが少なく撮り直しになりがちです。以下の手順で進めると無駄が減ります。
- 企画:誰に何を伝えるかを決めます。求人コンセプトの設計で職種別のペルソナを先に固めておくと、動画で伝える内容もぶれません。
- 院内合意:出演するスタッフに撮影の目的・公開先・映る範囲を事前に説明し、同意を得ます。個人が特定される映像であるため、退職時の取り扱いについても一言触れておくと後のトラブルを避けやすくなります。
- 撮影:診療時間外や休憩時間を使い、1カット30秒〜1分程度で区切って撮影します。長回しより短いカットの積み重ねの方が編集しやすい傾向があります。
- 編集:不要な間や言い淀みをカットし、テロップで補足します。BGMを使う場合は著作権フリー素材を選びます。
- 掲載:求人媒体・ホームページ・GBP投稿など、公開先ごとに推奨される尺やサイズが異なる場合があるため、必要に応じて書き出しを分けます。
やりがちな失敗と回避策
内製撮影でつまずきやすいポイントは共通しています。
- 音声が聞き取りにくい:内蔵マイクのみで撮影し、後から気づくケースが多いとされています。撮影前に必ずイヤホンで試し録りを確認します。
- 照明がなく顔が暗い:診察室・待合室は業務用照明が中心で、映像用には暗いことが一般的です。撮影角度を窓際に寄せるか、簡易照明を用意します。
- 話す内容が抽象的になる:「アットホームな職場です」といった曖昧な言葉だけでは伝わりにくく、1日の流れや入職の決め手など具体的なエピソードを引き出す質問設計が重要です。
- 編集に時間をかけすぎる:完璧を求めて公開が遅れるより、まず1本を出して応募状況を見ながら改善する方が実務的です。
公開後の運用:動画は媒体側の掲載ルールと定着施策の両輪で活きる
動画を作って終わりにせず、どの媒体でどう見せるかまで設計しておく必要があります。ジョブメドレーやIndeedなど媒体ごとに動画掲載の可否や仕様が異なるため、医療機関の求人媒体運用で媒体特性を確認したうえで動画の使いどころを決めると効率的です。
また、採用動画はあくまで応募のきっかけを増やす施策であり、入職後の定着まで担保するものではありません。動画で描いた職場像と実際の働き方にギャップがあると早期離職につながるおそれがあるため、定着率の改善策とあわせて運用することをおすすめします。
よくある質問
Q. iPhoneの機種は最新モデルでないと厳しいですか。 A. 4K撮影に対応していれば数世代前のモデルでも実用上問題ないとされています。むしろ照明とマイクの有無の方が仕上がりへの影響が大きい傾向があります。
Q. 編集は誰が担当すればよいですか。 A. 決まった担当者を置かず、その都度対応が空いたスタッフが担当すると作業が止まりがちです。1名を仮の担当窓口として決めておくと進行がスムーズになりやすいとされています。
Q. 動画の公開期間はどのくらいが目安ですか。 A. 媒体の仕様やスタッフの入退職状況によって適切な更新頻度は変わります。半年〜1年を目安に内容の陳腐化がないか見直す運用が扱いやすいとされています。
採用動画の内製化を含め、自院の採用課題をどこから着手すべきか整理したい場合は、採用力診断で現状を可視化してみてください。また、求人票や媒体運用の具体的なチェックポイントをまとめた資料は採用改善資料のダウンロードから確認いただけます。