採用

採用コストを無駄にしない|医療機関の定着率改善と入職後90日の設計術

求人媒体に費用をかけてようやく採用できたスタッフが、入職から数ヶ月で退職してしまう。この繰り返しに悩んでいる院長・事務長は少なくありません。離職の多くは入職後90日以内に集中する傾向があり、この期間の育成・面談設計を整えることで定着率は改善が見込めます。採用単価が上がり続けている今、「採れる」だけでなく「残る」設計に投資を回すことが、結果的にもっとも効率のよい採用コスト対策になります。

まず押さえるべき要点は3つです。

  1. 離職は入職直後に集中する:入職1〜3ヶ月の間に「思っていた仕事と違う」というギャップが表面化しやすく、この期間の対応が定着率を左右します。
  2. 定着は給与だけでは決まらない:業務内容の説明不足や相談窓口の不在など、お金以外の要因が離職の引き金になっているケースが多くあります。
  3. 定着率は数字で管理できる:入職者数・離職者数・離職タイミングを記録すれば、感覚論ではなく数字で改善点を特定できます。

採用できても定着しない理由|離職が起きるタイミングの傾向

離職のタイミングには一定の傾向があります。多いのは入職1週間以内の「イメージとのギャップ」、1ヶ月前後の「業務が覚えられない焦り」、3ヶ月前後の「試用期間終了を機にした見切り」の3つの山です。

やりがちな失敗は、この3つの山を区別せず「最近の若手は辞めやすい」で片づけてしまうことです。実際には、初日のオリエンテーション不足、業務マニュアルの不在、直属の相談相手がいないことなど、院内側で対応できる要因が多く含まれています。まずは過去1〜2年の退職者について、入職から何日目に退職したかを一覧化してみることをおすすめします。傾向が見えれば、どの時期の設計を優先すべきかが判断できます。

定着率とは何か|計算式と一般的な目安

定着率とは、一定期間内に入職した人数のうち、その後も継続して在籍している人数の割合です。計算式は「(入職者数−離職者数)÷入職者数×100」で求められます。

期間一般的に注目される目安確認するポイント
入職1ヶ月早期離職の有無オリエンテーション・初期教育の設計
入職3ヶ月(試用期間)定着率が大きく変わる節目業務習熟度・相談体制
入職1年中長期の定着状況評価・キャリアパスの提示

数字だけを追うと本質を見落としがちです。離職者が出た際は、退職理由を「本人の事情」で終わらせず、院内側の設計に改善できる点があったかを合わせて振り返ることが重要です。採用にかかったコストの内訳を可視化しておくと、定着施策への投資判断もしやすくなります。詳しい計算方法は薬剤師の採用コストの計算方法でも解説しています。

入職後90日の定着設計|オリエンテーション・面談スケジュール

入職後90日は「本人が組織に慣れる期間」であると同時に、「組織が本人を評価する期間」でもあります。この二方向を意識したスケジュールを組むことで、双方の不安を早期に解消できます。

タイミング実施すること目的
入職初日オリエンテーション・院内ルール説明不安の軽減、業務理解の土台づくり
1週間後1回目の面談(業務・人間関係の確認)早期のギャップ発見
1ヶ月後2回目の面談・業務習熟度の確認教育計画の見直し
2ヶ月後中間振り返り面談試用期間終了に向けた課題整理
3ヶ月後試用期間終了面談・評価共有継続雇用の合意形成、今後の目標設定

面談は院長や事務長がすべて担う必要はありません。日々の業務を近くで見ている先輩スタッフをメンターとして立てる方が、些細な違和感を早く拾いやすくなります。薬局のように少人数体制で運営している施設では、薬局の人手不足対策:小規模薬局が今日からできる採用と定着で紹介している院内体制のつくり方も参考になります。

給与以外でできる定着施策|チェックリストで見直す

給与改定は即効性がある一方、原資に限りがあり全職種で継続的に行うのは難しい施策です。まずは以下のチェックリストで、コストをかけずに見直せる項目から着手することをおすすめします。

  • 業務マニュアルが整備されており、初日から確認できる状態になっているか
  • 相談できる相手(メンター・直属の先輩)が明確に決まっているか
  • 業務範囲と責任の所在が入職前の説明と一致しているか
  • 3ヶ月・半年・1年先のキャリアパスを本人に示せているか
  • 定期面談の予定があらかじめカレンダーに組まれているか

採用時の求人票と実際の業務内容にズレがあると、それ自体が早期離職の要因になります。求人媒体選定や訴求内容の設計段階から定着を見据えておくことが理想的です。媒体ごとの向き不向きについては医療機関の求人媒体運用|医療特化媒体をメイン・検索エンジンをサブにで整理しています。

よくある質問

Q. 定着率はどのくらいを目安にすればよいですか。 A. 診療科や職種によって幅がありますが、入職1年以内の離職を採用人数の2〜3割以内に抑えられていれば、比較的落ち着いた状態と見られることが多いです。数字だけでなく、離職のタイミングが特定の時期に集中していないかも合わせて確認することをおすすめします。

Q. 定着施策にはどのくらいのコストがかかりますか。 A. 面談や1on1は既存スタッフの時間コストが中心で、追加の外部費用はかからないケースが多いです。研修資料の整備やメンター手当を設ける場合は数万円〜十数万円程度の予算を見込んでおくと、無理なく運用しやすくなります。

Q. 退職の意思を示された後でも引き止めは有効ですか。 A. 本人の意思が固まっている場合、引き止めが逆効果になるおそれがあります。むしろ退職理由を丁寧に聞き取り、次の採用や定着設計の改善材料として活用する方が、長期的には投資対効果が高いと考えられます。


入職後90日の定着設計は、採用コストを無駄にしないための最も基本的な投資です。自院の離職傾向や面談体制の現状を整理したい場合は、まず定着率改善のチェックシートをダウンロードして現状を可視化し、そのうえで無料診断を使って優先すべき改善ポイントを一緒に確認してみてください。

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