採用

クリニックの労務管理、採用前に整える就業規則とシフトの最低ライン

「求人票には『残業ほぼなし』と書いたのに、繁忙期になるとシフトが崩れて残業が常態化している」——このような求人票と実際の労務運用のズレは、内定辞退や早期離職の引き金になりやすい問題です。採用活動を強化する前に、就業規則・シフト・残業の扱いという労務管理の最低ラインを整えておくことで、入職後のミスマッチを防ぎやすくなります。本記事では、クリニック・薬局の院長や広報担当者が求人を出す前に確認すべき労務管理のポイントを実務目線で解説します。

まず押さえるべき要点は3つです。

  1. 就業規則は求人票の「答え合わせ」の土台になる:条件を明文化していないと、面接時の説明が担当者ごとに変わりトラブルの元になります。
  2. シフトの組み方が求人票の労働時間条件と一致しているか確認する:曜日別・時間帯別の勤務実態を数字で把握することが出発点です。
  3. 残業の扱い(有無・上限・代休)を採用前に決めておく:曖昧なまま採用すると早期離職につながりやすくなります。

求人票と労務の食い違いが早期離職を招く理由

求職者は求人票に書かれた条件を前提に応募し、面接や内定承諾の判断をします。ところが入職後にシフトの組まれ方や残業の実態が求人票と異なると、「聞いていた話と違う」という不信感が生まれやすく、早期離職の主要な原因のひとつになります。

やりがちな失敗は、忙しさに応じて現場の運用でルールを都度調整してしまい、その調整内容が就業規則や求人票に反映されないまま放置されるパターンです。回避策としては、シフト運用のルールを定期的に棚卸しし、求人票の記載内容と実態が一致しているかを採用担当者だけでなく院長自身が確認するタイミングを設けることが有効です。求人票の作り方自体は求人票の書き方|応募が来るミッション型11ブロック構成の作り方も参考にしてください。

クリニックの労務管理とは

クリニックの労務管理とは、就業規則・勤怠管理・シフト作成・残業管理・給与計算・社会保険手続きなど、スタッフの労働条件と勤務実態を適正に管理する業務全体を指します。採用活動の前提として整えておくべき「守りの土台」であり、求人票の訴求内容と実務がずれていないかを担保する役割を担っています。

採用前に確認すべき労務の最低ライン

求人票を出す前に、以下の項目を最低限確認しておくと、入職後のギャップを減らしやすくなります。

項目確認内容求人票への反映
就業規則労働時間・休日・賃金体系が明文化されているか勤務時間・休日日数を正確に記載
シフトルール曜日別・時間帯別の実勤務パターン「シフト制」「固定曜日」等の実態を明記
残業の扱い有無・月平均時間・上限の目安「残業月◯時間程度」など具体的な表現
休日・有給年間休日数、有給取得の実績年間休日数と取得しやすさの根拠
社会保険加入条件(週の勤務時間等)パート・常勤で加入条件が異なる旨を明示

一般的なレンジとして、常勤スタッフの月間残業時間は診療体制や検査・処置の有無によって差が大きいため、平均値だけでなく繁忙月と閑散月の幅を把握しておくと、求人票の表現に説得力が出やすくなります。

シフトと残業が求人票と食い違うと起きること

採用プロセスを時系列で見ると、食い違いが表面化するタイミングは主に3か所あります。

  1. 面接時:求人票の条件について質問された際、担当者の説明が曖昧だと不信感を持たれやすくなります。
  2. 内定後の入職前研修:就業規則やシフト表を初めて見せた際に、求人票との差異に気づかれるケースがあります。
  3. 入職後1〜3か月:実際の勤務で残業やシフトの偏りを体感し、離職を検討し始める時期です。

このずれを放置すると、内定辞退や早期離職だけでなく、既存スタッフの不満にもつながるおそれがあります。内定後の連絡や説明の丁寧さも重要で、面接辞退を防ぐ採用連絡設計のような返信速度・情報提供の設計もあわせて見直すと効果的です。

就業規則を整える優先順位

すべてを一度に完璧に整えるのは現実的ではないため、優先順位をつけて着手することをおすすめします。

  1. 労働時間・休日・賃金の基本条件を明文化する:最も採用トラブルに直結しやすい項目です。
  2. 残業・休日出勤のルールと上限を定める:曖昧な運用が最も早期離職に結びつきやすい領域です。
  3. 有給・福利厚生の運用実態を確認する:制度はあっても取得実績が伴わないケースが少なくありません。

就業規則の整備と並行して、採用コンセプトや訴求の見直しを行うと、労務の実態に即した求人票が作りやすくなります。採用ミスマッチを防ぐ視点は採用ミスマッチを防ぐ求人票の作り方も参考になります。

入職後の定着につなげる運用

労務の最低ラインを整えるだけでは、定着まで見通せたことにはなりません。入職後90日の設計や、福利厚生の意図をどう伝えるかによって、条件面の食い違いによる離脱を防ぎやすくなります。定着施策の全体像は採用コストを無駄にしない定着率改善と入職後90日の設計術、福利厚生の伝え方は福利厚生の書き方|制度に「なぜ作ったか」を添えるで詳しく解説しています。

よくある質問

Q. 労務管理と就業規則は同じものですか? A. 就業規則は労務管理を構成する文書のひとつで、労働条件や服務規律を明文化したものです。労務管理はそれに加えてシフト作成・残業管理・給与計算・社会保険手続きなど運用全般を含む、より広い概念として捉えるのが一般的です。

Q. 就業規則は何人以上のクリニックで必要ですか? A. 労働基準法上、常時10人以上の労働者を使用する事業場は就業規則の作成・届出が義務とされています。10人未満でも、求人票との食い違いを防ぐ目的でルールを文書化しておくと採用トラブルの予防につながりやすくなります。

Q. 求人票に書いた条件と実際の運用がずれていた場合、どう対応すればよいですか? A. 気づいた時点で早めに就業規則やシフト表を見直し、既存スタッフと新規採用者の双方に周知することが望ましいです。曖昧なまま放置すると早期離職や口コミでの評判低下につながるおそれがあるため、優先度高く対応することをおすすめします。


求人票と労務の実態にずれがないか、自院だけで判断しきれない場合は、まず採用ノウハウ資料をダウンロードして求人票のチェックポイントを確認し、あわせて無料診断で自院の求人・採用体制の課題を洗い出してみることをおすすめします。

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