薬機法

医療広告と求人広告の違い|職安法との切り分けを整理する

「採用サイトに載せている院長の実績紹介、これって医療広告のルールに引っかかるのでは」と不安になったことはないでしょうか。求人広告と医療広告は、どちらも「クリニックの情報を外部に発信する」という点で似ていますが、適用される法律も、審査の視点も異なります。この違いを整理しないまま採用ページを作ると、思わぬところで別の規制に触れてしまうおそれがあります。

まず押さえるべき要点は3つです。

  1. 求人広告は医療広告ガイドラインの直接の対象ではなく、職業安定法(職安法)が適用される
  2. 採用サイトでも患者向けの案内を兼ねるページは医療広告ガイドラインの対象になりうる
  3. 求人票の労働条件表示には、職安法特有の明示義務とNG表現がある

医療広告ガイドラインと職安法は別の法律

医療広告ガイドラインとは、医療法に基づき、患者が医療機関を選ぶ際に見る広告について、誇大・誤認表現を規制するルールです。対象になるかどうかは「誘引性」「特定性」「認知性」の3要件で判断されます。この考え方の詳細は医療広告の誘引性とは何かでも解説しています。

一方、求人広告は労働者を募集するための情報であり、医療広告ガイドラインが想定する「患者を医療機関に誘引する広告」とは目的が異なります。求人広告に主として適用されるのは職業安定法です。職安法は、求人票や募集広告に記載する労働条件について、虚偽表示や実態との著しい乖離を禁止しています。

つまり、「求人広告だから医療広告のルールと無関係」というわけではなく、「求人広告には別の法律(職安法)が適用される」という理解が正確です。

求人広告が医療広告ガイドラインの対象になるケース

求人広告そのものは職安法の対象ですが、採用サイト内のページ構成によっては医療広告ガイドラインの対象に該当するおそれがあります。判断基準は以下のとおりです。

チェック項目医療広告ガイドライン該当の可能性
求人ページのみで、診療内容や実績紹介がない低い(職安法のみ対象と考えられる)
採用ページ内に「年間手術件数」「治療実績」等の記載がある高い(患者も閲覧しうる情報のため)
院長インタビューで治療の効果に言及している高い(誘引性が生じるおそれ)
採用ページが患者向けページと分離されておらず、同一URL構造で回遊しやすい中程度(認知性・誘引性の判断に影響)

採用サイトの中に「当院の強み」として診療実績や症例数を書きたくなる場面は多いですが、それが応募者だけでなく患者にも読まれる構成であれば、医療広告ガイドラインの限定解除要件を満たしているか確認する必要があります。限定解除の要件については医療広告ガイドラインの限定解除とはで詳しく整理しています。

採用サイトで安全に書ける表現の目安

採用サイト特有の表現は、患者向け広告とは異なる基準で判断されます。実務でよく迷うポイントを整理します。

  • 院内の雰囲気・働き方:「アットホームな職場です」等の主観的表現は、職安法上も根拠のない誇大表現とみなされるおそれがあるため、具体的な制度や事実(有給取得率、研修制度の有無など)で裏付けるのが望ましいと考えられます。
  • 給与・待遇:固定残業代を含む場合は時間数と金額を明示するなど、職安法の指針に沿った表記が必要です。
  • 院長・スタッフの人柄紹介:採用文脈であれば比較的自由度が高いものの、治療効果や実績への言及が混じると医療広告ガイドラインの対象になりうるため、切り分けて書くのが安全です。
  • 「未経験歓迎」「即戦力募集」等の表現:応募者に誤解を与えない範囲であれば職安法上の問題は生じにくいと考えられますが、実態と乖離した好条件の記載は避ける必要があります。

求人票そのものの書き方は求人票の書き方|応募が来るミッション型11ブロック構成も参考になります。

やりがちな失敗と回避策

採用ページと患者向けページを分離せずに運用しているクリニックでは、以下のような失敗が起こりやすいと考えられます。

  1. 採用ページに治療実績を転載してしまう:患者向けページの実績紹介をそのまま採用ページに使い回すと、意図せず医療広告ガイドラインの対象表現を含んでしまうことがあります。採用向けに書き直すか、実績部分は掲載しない判断も選択肢です。
  2. 給与レンジを「経験・能力による」とだけ書いてしまう:職安法上、できる限り具体的な金額幅の明示が求められる傾向にあります。相場の調べ方はクリニックスタッフの給与相場と募集時給の決め方を参照してください。
  3. 院長インタビューで治療の効果を強調してしまう:採用目的の取材でも、発言内容に治療効果への言及が含まれると医療広告としての審査対象になりうるため、事前に原稿チェックを行う体制が望ましいと考えられます。

出稿・掲載前のチェック体制

求人広告と医療広告、どちらの規制にも配慮した運用のためには、出稿前の確認フローを決めておくことが実務上有効です。

  1. 掲載予定のページ・原稿が「患者向け」か「応募者向け」かを明確にする
  2. 患者も閲覧しうる構成であれば、医療広告ガイドラインの限定解除要件を満たしているか確認する
  3. 給与・待遇の記載が職安法の明示義務を満たしているか確認する
  4. 院長・現場責任者による最終チェックを経てから公開する

このようなチェック体制の作り方は医療広告チェック体制のつくり方でも扱っています。

よくある質問

Q. 採用サイトのURLを患者向けサイトと分けるべきですか。 A. 必須ではありませんが、ページ構成やナビゲーションで採用情報と患者向け情報を明確に分離しておくと、医療広告ガイドラインの適用範囲を判断しやすくなると考えられます。

Q. Indeedやジョブメドレーに掲載する原稿も職安法の対象ですか。 A. はい。求人媒体に掲載する原稿も職安法上の求人広告に該当するため、労働条件の明示義務やNG表現のルールが適用されます。

Q. 医療広告ガイドラインと職安法、両方に違反した場合はどうなりますか。 A. それぞれ所管が異なり(医療広告は保健所等、職安法はハローワーク等)、別々に指導や是正の対象となる可能性があります。両方の観点から原稿を確認しておくことをおすすめします。


求人広告と医療広告、それぞれの規制を踏まえた原稿づくりに不安がある場合は、無料資料のダウンロードで採用サイト設計の考え方をまとめた資料をご覧いただけます。また、自院の採用ページが現状どの程度リスクを抱えているか気になる方は、無料診断で確認することも可能です。

集患・採用のお悩み、まずは30分の無料相談から 1分で無料マーケ体制診断 お問い合わせ