薬機法

医療広告の事例解説書 第6版(令和8年3月)改訂ポイントを解説

「ガイドラインの内容は把握しているつもりだが、事例解説書の改訂までは追い切れていない」という院長・広報担当の方に向けた記事です。事例解説書の改訂は医療法の条文変更ではなく、既存の規制をどう当てはめるかという解釈の明確化が中心です。第6版(令和8年3月)についても、自院サイトやSNS運用に影響するかどうかは「新しく禁止された表現があるか」ではなく「これまで曖昧だった線引きがどちらに寄せられたか」という視点で確認するのが実務的です。

まず押さえるべき要点は3つです。

  1. 事例解説書は解釈の補足資料であり、医療法・医療広告ガイドライン本体とセットで読むもの
  2. 改訂のたびに全項目を読み直すのではなく、自院が使っている媒体・表現に該当する論点だけを重点確認する
  3. 改訂対応は院長単独ではなく、広報担当・制作会社を含めたチェック体制として運用する

事例解説書とは何か、ガイドラインとどう違うのか

事例解説書とは、医療広告ガイドラインが定める広告可能事項・禁止事項について、具体的な表現例をもとにOK・NGの判断基準を示した厚生労働省の解説資料です。ガイドライン本体が原則・定義を定める条文にあたるのに対し、事例解説書はその条文をウェブサイトやSNS投稿といった実際の媒体にどう当てはめるかを補う立ち位置になります。

そのため、事例解説書の改訂で扱われるのは新しい禁止事項の追加よりも「これまで解釈が割れていた表現について、行政としての考え方を明確にする」という論点が中心になりやすい点を押さえておくと読み方が変わります。ガイドライン全体の構造から確認したい場合は、医療広告ガイドラインの全体像を解説した記事もあわせてご確認ください。

改訂で変わるのは「趣旨」ではなく「線引きの具体例」

事例解説書の改訂履歴を見ると、比較優良表現・体験談・ビフォーアフター写真・自由診療の限定解除といった論点が繰り返し扱われてきました。改訂のたびに規制の趣旨そのものが変わるわけではなく、「どこまでが体験談に該当するか」「限定解除の4要件をウェブサイトのどの位置に満たせば足りるか」といった、運用担当者が迷いやすい境界線の具体例が更新される回が多い、という傾向として捉えておくと実務対応がしやすくなります。

限定解除の要件については、限定解除の4要件と自院サイトのチェック手順を整理した記事で個別に確認できます。

第6版(令和8年3月)で確認しておきたい論点

改訂内容の一次情報は厚生労働省が公開する事例解説書のPDF本体です。本記事では条文の引用ではなく、改訂のたびに実務上チェックが必要になりやすい論点を整理し、自院での確認手順として使えるかたちにまとめます。

論点カテゴリ該当しやすい媒体院内での確認ポイント
自由診療の限定解除要件の当てはめクリニック公式サイトの自由診療ページ4要件(自由診療である旨・標準的な費用・治療期間や回数の目安・主なリスクと副作用)が同一ページから確認できるか
SNS投稿・広告該当性の判断Instagram・X・LINE公式アカウント投稿単体で広告に該当する可能性がある表現(誘引性・特定性の有無)を含んでいないか
比較優良表現・最上級表現サイトのトップページ・広告クリエイティブ「地域No.1」「最新の設備」等、他院と比較して優良である印象を与える表現が残っていないか
体験談・ビフォーアフターブログ記事・症例紹介ページ患者の体験談やビフォーアフター画像を掲載していないか、掲載している場合は削除・改稿の対象になっていないか

自院サイトのSNS運用における広告該当性の判断軸は、医療広告ガイドラインとSNS運用の判定基準を解説した記事で詳しく扱っています。

自院サイト・SNS・広告への当てはめ方

改訂内容を確認したあとにやるべきことは、全ページの精査ではなく「自院が実際に使っている媒体・表現だけ」に絞った当てはめ作業です。手順の目安は次のとおりです。

  1. 自院の広告媒体を棚卸しする(公式サイト・SNS・リスティング広告・院内掲示・求人媒体など)
  2. 事例解説書の改訂論点のうち、棚卸しした媒体に関係するものだけを抽出する
  3. 該当ページ・投稿のスクリーンショットを保存したうえで、表現の修正要否を判断する
  4. 修正が必要な場合は、公開前に第三者(広報担当や制作会社)にダブルチェックを依頼する

この当てはめ作業を毎回ゼロから行うのは負担が大きいため、後述するチェックリストの形で残しておくと次回改訂時の工数を減らせます。

改訂対応でやりがちな失敗と回避策

改訂対応でよく見られる失敗は次の3つです。

  • 改訂内容を院長だけが確認し、広報担当や制作会社に共有していない。公開済みページの修正が漏れる原因になりやすいため、確認結果を書面やチャットで共有する運用が望ましいです。
  • 改訂前後の差分だけを見て、既存ページ全体の確認を省略する。過去の改訂で指摘対象だった表現が未修正のまま残っているケースもあるため、改訂を機に既存ページも棚卸しする機会と捉えるほうが実務的です。
  • 委託先の制作会社に丸投げし、院長側で一次判断できる材料を持たない。最終的な広告表現の可否判断は開設者側の責任範囲になりやすいため、チェックリストは院内でも運用できる粒度にしておく必要があります。

実際の行政指導事例からNGパターンを把握しておきたい場合は、医療広告ガイドライン違反事例と行政指導までの流れを解説した記事が参考になります。NG表現の具体的な言い換え方はNG表現と言い換え方の考え方を整理した記事で確認できます。

院内での改訂チェック体制の作り方

事例解説書は今後も一定の周期で改訂される見込みのため、都度対応するのではなく院内のルーティンとして仕組み化しておくと負担が小さくなります。具体的には、①改訂公表を確認する担当者(院長または広報担当)を1名決める、②自院の媒体棚卸しシートを常設し半年に一度更新する、③修正が必要な場合の承認フロー(誰が最終確認するか)を事前に決めておく、という3点を最低限整えておくと、改訂のたびに一から確認し直す状態を避けられます。

よくある質問

Q. 事例解説書は法律ですか。ガイドラインとの違いを教えてください。 A. 事例解説書は医療法そのものではなく、医療広告ガイドラインの解釈を具体例で補う行政資料という位置づけです。改訂で罰則や規制対象が新設されるわけではなく、既存の線引きが具体化される回が多いため、条文とあわせて確認する運用が実務的だと考えられます。

Q. 第6版(令和8年3月)の改訂内容はどこで一次情報を確認できますか。 A. 厚生労働省の医療広告に関する専用ページに掲載される事例解説書の最新版PDFが一次情報です。本記事は改訂対応の考え方と院内チェック手順を扱うものであり、条文そのものの引用は原本を直接ご確認いただくことをおすすめします。

Q. 改訂対応は院長・広報担当・制作会社のどこが担うべきですか。 A. 最終的な広告表現の可否判断は開設者である院長の責任範囲になりやすく、広報担当や制作会社はチェックリストの運用と一次確認の窓口を担う役割分担が現実的だと考えられます。委託先任せにせず、院内で一次判断できる体制を残しておくことが望ましいです。


事例解説書の改訂対応を院内だけで進めるのが難しい場合は、医療広告ガイドラインのチェックリストがダウンロードできる資料から自院の媒体棚卸しに使えるフォーマットを確認いただけます。また、自院サイトやSNS運用が現状のガイドラインに沿っているか不安がある場合は、無料の診断ページから現状把握を行うことも可能です。

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