「近隣に新しいクリニックが開業した」「紹介や口コミは変わらないのに、なんとなく新患が減った気がする」——そう感じている院長は少なくありません。診療圏内の競合状況を定期的に把握しておくことで、集患施策の優先順位づけや広告投資の判断を、感覚ではなく根拠に基づいて行えるようになります。競合調査は業者に依頼しなくても、院長や事務長が自院で継続的に実施できる範囲の作業です。
まず押さえるべき要点は3つです。
- 調査範囲を診療圏で区切る: 商圏(一般的に徒歩・車で15〜20分圏内など)を先に定義してから競合を洗い出します。
- 定点観測を前提に項目を絞る: 一度きりの調査ではなく、四半期に1回など継続できる粒度で項目を設計します。
- 調査結果を集患施策の優先順位に反映させる: 調べて終わりにせず、広告・MEO・診療体制のどこに手を打つかの判断材料にします。
診療圏競合調査とは
診療圏競合調査とは、自院の診療圏内にある同一・近接診療科のクリニックについて、診療内容・診療時間・口コミ評価・広告出稿状況などを定点的に把握し、自院の集患戦略の判断材料とする調査のことです。単に「近くに何件あるか」を数えるだけでなく、患者が実際に比較検討する情報(Googleマップの評価・予約のしやすさ・診療時間帯など)を中心に見ていく点が実務上のポイントです。
調査すべき5つの項目
調査項目を絞りすぎると判断材料が不足し、広げすぎると継続できません。以下の5項目を軸にすると、初回2〜3時間、更新時は1時間程度で回せる範囲に収まるのが一般的です。
| 項目 | 確認内容 | 主な情報源 |
|---|---|---|
| 診療科目・自費診療 | 保険診療の範囲、自費メニューの有無・価格帯 | 公式サイト |
| 診療時間・休診日 | 平日夜間診療、土日診療の有無 | 公式サイト、Googleマップ |
| 口コミ件数・評価 | 件数の推移、直近の投稿内容と返信の有無 | Googleビジネスプロフィール |
| Web予約・オンライン診療 | 予約システムの有無、当日予約の可否 | 公式サイト |
| 採用・スタッフ体制 | 医師数、常勤・非常勤の別、求人の有無 | 求人媒体、公式サイト |
このうち口コミ件数と評価は、MEO対策は自分でできるで紹介している手順と同じ視点で、競合側のGoogleビジネスプロフィールを確認すると効率的です。
情報源別の調べ方
情報源ごとに得られる情報の性質が異なります。公式サイトからは「診療方針」、Googleマップからは「患者からの評価」、求人媒体からは「採用市場での競争力」が読み取れるため、1つの情報源だけで判断しないことが重要です。特に求人票の変化(増員募集・給与レンジの引き上げなど)は、競合が診療体制を拡大しようとしているサインとして読み取れる場合があります。
調査結果の読み方:優先順位をつける判断基準
調査結果は「自院より優れている項目」を数えるための材料ではなく、どこに投資すべきかの優先順位づけに使います。判断の目安は以下のとおりです。
- 口コミ件数が自院の3倍以上ある競合が診療圏内に複数ある場合、MEO・口コミ運用が集患のボトルネックになっている可能性があります。
- 競合の多くが夜間・土日診療に対応している場合、自院の診療時間が新患獲得の障壁になっているおそれがあります。
- 競合の広告出稿(リスティング広告のキーワード、SNS広告の出稿有無)が目立つ場合、自院の広告投資が相対的に不足している可能性があります。
こうした判断は、来院経路の実態と合わせて見ると精度が上がります。来院経路分析のはじめ方で紹介している自院データと突き合わせることで、「競合に負けている項目」と「自院の新患がそもそもどこから来ているか」を両方の視点から確認できます。
やりがちな失敗と回避策
競合調査でよくある失敗は、調査範囲を広げすぎて継続できなくなることです。診療圏外のクリニックまで含めて調べ始めると情報量が膨らみ、次回以降の更新が止まってしまうケースが少なくありません。診療圏を先に定義し、対象を5〜8院程度に絞ってから項目を固定するのが、継続的に運用するうえでの現実的な範囲です。また、調査結果を「競合より優れているかどうか」の比較だけで終わらせず、自院の集患戦略全体の中でどう位置づけるかまで落とし込むことも欠かせません。この優先順位の考え方は、クリニックのマーケティング戦略とはで解説している「誰に・何を・どの順で」の枠組みに沿って整理すると判断しやすくなります。
よくある質問
Q. 競合調査はどのくらいの頻度で行えばよいですか。 A. 診療圏の状況が大きく変わらない限り、四半期に1回程度の頻度で確認する運用が一般的です。近隣で新規開業や大規模な広告出稿などの動きがあった場合は、定例の更新を待たずにその都度スポットで確認しておくと、変化を早めに把握しやすくなります。
Q. 競合クリニックの患者数や売上まで調べる必要がありますか。 A. 患者数や売上は外部から正確に把握することが難しく、無理に推測する必要はありません。口コミ件数の推移や求人状況など、外部から確認できる指標を組み合わせて傾向をつかむ方法が現実的です。
Q. 競合調査の結果、価格を下げるべきでしょうか。 A. 価格だけで比較すると自院の診療方針とずれるおそれがあります。診療時間・自費メニュー・口コミ評価など複数の項目を踏まえたうえで、価格以外に改善できる余地がないかを先に検討することをおすすめします。
診療圏の競合調査は、自院の立ち位置を客観的に把握するための出発点にすぎません。調査結果をもとにどの施策から着手すべきか整理したい場合は、集患施策の資料をダウンロードのうえ、無料診断で自院の状況を具体的に確認してみてください。